あなたの絵は必ず誰かの心を動かす!自信を持つためのヒント | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 1月11日
- 読了時間: 7分
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段は風景画をメインに制作しながら、出張サービスというかたちで全国各地を巡り、依頼主の方のご自宅や店舗でライブペインティングを行ったりしています。さまざまな場所で活動する中で、多くの方から「自分の絵に自信がない」「本当にこの絵を人に見せてもいいんだろうか」という声をしばしば耳にします。実は私自身も、絵を描き始めた頃は「こんな絵、誰が見ても喜ばないんじゃないか」と、何度も筆を置きかけた経験がありました。
しかし、描き続けていくうちに痛感したのが、「たとえ自分では拙いと思う絵でも、誰かの心を動かすことは必ずある」ということです。実際、私の作品を見て「この景色に癒やされた」「懐かしい気持ちになった」と言ってくださる方がいて、そこから私も“もっと描こう”“もっと上手くなりたい”という自信を得られたのです。今回は、「あなたの絵は必ず誰かの心を動かす」というテーマで、絵に対する自信を持つためのヒントをお伝えしてみたいと思います。
1. なぜ“自信がない”と感じるのか
そもそも、「自分の絵に自信がない」と感じるのは、どうしてなのでしょうか。多くの場合、その原因は“理想とのギャップ”や“他者との比較”にあると言われています。自分の頭の中にある完成イメージや、SNSなどで見かける素晴らしい絵と比べて、「自分は全然ダメだ」と落ち込んでしまう。これは誰しもが通る道ではないでしょうか。
私も、学生時代に初めて美術展を訪れたときに、プロの画家が描く大作を前に「こんなすごい絵、絶対に描けるわけがない」と愕然とした経験があります。しかし、そこから「自分には自分にしか出せない味があるのでは?」と視点を切り替えてみると、少しずつではありますが自分の絵を肯定できるようになりました。つまり、“理想や比較”は上達へのモチベーションになりうる一方で、過剰に意識しすぎると自信を失う原因にもなるのです。
2. “誰か”に刺さればいい
絵を描く理由は人それぞれですが、多くの方が「誰かに見てほしい」「誰かの心を動かしたい」という想いを持っているのではないでしょうか。ところが、「誰にでもウケる絵を描かなきゃ」と考え始めると、一気にハードルが上がります。どんなに完成度の高い絵でも、世の中すべての人の好みに合うことはあり得ません。
私が学んだのは、「“誰か”一人でもいいから、刺さればいい」という考え方です。自分の描きたいテーマ、好きな色使い、独特のタッチが、世間一般のトレンドと違っていても問題ありません。それを「いいね」と言ってくれる人が一人でもいれば、その時点で“心を動かす力”は生まれています。実際、私の個展に来てくださった方が「この夜の雪景色が昔住んでいた場所を思い出させてくれる」と言って涙を浮かべてくれたとき、「ああ、描いてよかった」と心から思いました。
3. “下手”でも心を動かすことがある
「でも、私の絵は下手だから…」と思う人もいるかもしれません。確かに、技術的な完成度が高い絵は目を引きやすいかもしれませんが、絵の魅力はそれだけではありません。むしろ、“下手”に見える絵だからこそ伝わる素朴な味わいや、作者の個性が強烈に滲み出ることも多々あります。
私も一時期、デッサン力を高めようと必死になりすぎて、逆に自分の“らしさ”を見失ってしまったことがありました。技術的には向上しているのに、完成品を見てもなんだか味気ない…。ところが、少し力を抜いて自分の好きな描き方で描いた絵のほうが、意外にも多くの人の心に響いたのです。技術を磨くことは大切ですが、同時に“自分らしさ”や“オリジナリティ”を大事にすることで、下手に見える絵でも心に届く場合があるんですよね。
4. “目の肥えた人”だけでなく、素直に受け止める人もいる
「人に見せるからには、目の肥えた人に評価されなければ価値がない」と思い込んでいませんか? 確かに、美術の専門家やプロのクリエイターからの称賛は嬉しいものです。しかし、実は多くの人が絵の専門知識を持たず、純粋な気持ちで作品を鑑賞しています。そうした方々にとっては、難しい技法や理論よりも、“わかりやすさ”や“インパクト”、“感情に訴える何か”のほうが大きく響くかもしれません。
私が出張サービスで描いたときも、「美術はよくわからないけど、この色合い好きだな」「この風景、昔行った場所を思い出す」と言ってくださる方が少なくありません。専門家ではなくても、日々の暮らしの中で絵から何かを感じ取ってくれる素直な鑑賞者がたくさんいるのです。絵の価値は、決して専門家だけが決めるものではないと思います。
5. SNSでの反応がすべてではない
今の時代、SNSで作品を公開して評価を得ようとする人が増えていますが、ここには落とし穴もあります。SNSは“短時間でのインパクト勝負”になりがちで、タイミングやフォロワー数、アルゴリズムの影響など、作品そのものの良し悪しと直接関係ない要素で評価が左右されることが少なくありません。したがって、SNSで思ったような反応が得られなくても、あなたの絵の価値が低いとは限らないのです。
私自身も、SNSで大きくバズった作品と、個展で実際に見てもらって高い評価を受けた作品は必ずしも一致しません。むしろ、SNS上では埋もれていた絵が、リアルの場では強い感動を与えたという例もあります。SNSの数字はあくまで一側面として捉え、必要以上に振り回されないようにしたいですね。
6. “共感”だけが正解ではない
「誰かの心を動かす」と聞くと、ポジティブな共感や感動ばかりをイメージするかもしれません。しかし、実際には“好き嫌いをはっきり分ける”絵も強く心を揺さぶる力があります。ある人にとっては不快かもしれないけれど、別の人にとっては強烈に刺さる――そんな絵も世の中にはたくさん存在します。要は“人の心を動かす”とは、必ずしも「良い評価」「共感」を得ることだけではないということです。
私は一度、抽象的なタッチで雪の夜景を描いたとき、ある方から「怖い印象を受ける」と言われたことがあります。正直、当初は否定的に感じて落ち込みました。しかし、別の方は「この絵から感じる静寂と少しの恐怖感がたまらなく好き」と言ってくださったのです。共感を得られなくても、人によっては強い印象を受ける――それも立派に“心を動かす”例だと思います。
7. “成長”が自信へとつながる
“自信を持つ”ためには、地道な“成長”の実感も必要です。今の時点で自信がなくても、昨日より今日、今日より明日と少しずつでも上達すれば、それが自信のもとになっていきます。たとえば、デッサン力を鍛える、色彩感覚を学ぶ、構図を工夫する――など、小さな目標を設定してクリアしていくことで、「自分は確実に前に進んでいるんだ」という感覚が芽生えるでしょう。
私がまだ駆け出しの頃、道内の景色をスケッチしながら毎日少しでも進歩を感じられるよう努めていました。すると、「あれ、前は時間がかかりすぎた構図取りがだいぶ早くなったな」とか「この陰影の出し方、上達してる!」という手応えが積み重なり、「自分は描き続ける価値がある」と自信を持てるようになったのです。上達している実感は、自信の土台になります。
8. “描く楽しさ”が最終的な支えになる
最後にお伝えしたいのは、何より“描く楽しさ”を忘れないでほしいということ。どれだけ技術を磨いても、どれだけ評価を得ても、“描くこと自体が好き”という原点を見失うと苦しくなってしまいます。逆に、描く過程が楽しいと思える限り、その絵にはあなたの想いが乗り、きっと誰かの心を動かす力を持つはずです。
私も、試行錯誤を続ける中で何度もスランプに陥りましたが、最終的に「やっぱり描くのって面白いな」と思えたからこそ続けられたと思います。プロかアマかに関係なく、“好き”という感情は絵の中に表れるもので、それが“熱量”となって鑑賞者に伝わるのではないでしょうか。
以上、「あなたの絵は必ず誰かの心を動かす!自信を持つためのヒント」を8つに分けてお伝えしました。改めて内容をまとめると、
1. なぜ“自信がない”と感じるのか
2. “誰か”に刺さればいい
3. “下手”でも心を動かすことがある
4. “目の肥えた人”だけでなく、素直に受け止める人もいる
5. SNSでの反応がすべてではない
6. “共感”だけが正解ではない
7. “成長”が自信へとつながる
8. “描く楽しさ”が最終的な支えになる
絵に対する自信は、“技術”や“評価”だけでなく、“描き続けることで得られる喜び”や“誰か一人の心に響いたという実感”など、さまざまな要素から生まれます。まだ思うように描けなくても、まだ大勢の人に認められなくても、あなたの作品を見て心を動かされる人は必ずいるはずです。その可能性を信じて、どうか筆を置かずに描き続けてみてください。
もちろん、焦らずに自分のペースで大丈夫。あなたの絵が、あなた自身だけでなく、いつか誰かの大切な思い出や感情に触れる日がきっと来ると信じています。
執筆者:寺野彬秀