絵の才能なんて関係ない!大切なのは続けること | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 1月16日
- 読了時間: 8分
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段は風景画をメインに描きながら、時には出張サービスという形で全国を回り、絵を制作・展示しています。こうした活動の中で、多くの方から「自分には絵の才能がないんです」「才能がないとプロにはなれませんよね?」という声をよく耳にしてきました。しかし、私の経験上、絵の上達やアートの道において“才能”が絶対的な要素ではないと感じています。それよりも重要なのは、続けること――試行錯誤しながら筆を握り続ける意志です。今回は「絵の才能なんて関係ない!大切なのは続けること」というテーマで、絵を描く上で大切になる視点をいくつかお話ししてみたいと思います。
1. なぜ“才能”を気にしてしまうのか
多くの人が「自分には才能がない」と嘆く背後には、ある種の“イメージ”があるのかもしれません。天才と呼ばれる画家が子どもの頃から圧倒的な絵を描いていたり、SNSなどで一躍バズった若いイラストレーターがクローズアップされたりすると、「やはり生まれ持ったセンスがないと無理なのでは」と思い込んでしまいがちです。
私自身も、学生時代は周りにすごい才能の持ち主がいて、「同じように絵を描いてもかなわないな」と劣等感を抱くことが多々ありました。ところが、いざ社会に出てから本格的に絵の勉強を再開し、描き続けていくうちに気づいたのは、“才能”だけでは続けられないし、“才能”がなくても続けていれば思わぬ道が開けるという事実です。才能があるなしを考えるより、絵を描き続けられるかどうかが、はるかに大きな鍵になると思うようになりました。
2. “好き”をエンジンにすれば才能の壁は越えられる
才能とは“生まれつき備わった素質”だとすれば、その一方で“好き”という感情は誰にでも育てられます。絵を描くことが好きで、描いているとワクワクする――その気持ちこそが、上達へのエンジンになると私は信じています。私が出会った多くの画家さんやイラストレーターさんの中にも、「最初は全然上手く描けなかったけれど、とにかく好きだからやめられなかった」という方が珍しくありません。
私も、何時間描いても苦にならないような“好き”があったからこそ、技術的に壁にぶつかっても諦めずに乗り越えてこれた実感があります。好きというモチベーションには、才能の有無を超える力があるのではないでしょうか。たとえば、たとえ才能があったとしても興味がなければ練習しませんよね。逆に、才能がなかったとしても、好きだからこそ日々描き続ける。それが結果的に、大きな成長につながるのだと思います。
3. 絵は“積み重ね”が成果に直結する
絵を描く上で特筆すべきなのは、“積み重ね”がわかりやすく成果に出るという点です。たとえば、1日1スケッチを毎日続けていけば、1年後には365枚のスケッチが手元に残ります。そこに“上達しない”という選択肢はありません。少なくとも、最初の10枚よりはだいぶ上手く描けるようになっているはずです。これこそ“続ける力”の大きなメリットで、“才能がないから”と諦めるより、継続したほうがはるかに早く形になる世界だとも言えます。
私も、毎朝30分のスケッチや、毎日の小さな描き込みを習慣化していた時期があります。そのおかげで、筆の使い方や構図の取り方が自然と身体に染み付いていった実感があるんです。“描けば描くほど上達する”というシンプルな法則があるからこそ、才能の壁を感じている人でも続けていれば必ず成長できると断言できます。
4. “壁”にぶつかったときは学びのチャンス
“才能がない”と悩む原因の一つに、「壁にぶつかるともうどうしようもない」と思い込んでしまうパターンがあります。デッサン力が上がらない、色彩センスがない、キャラクターデザインがうまくいかない――そういった壁に直面すると「やっぱり才能がないんだ」と結論づけてしまいがちです。
しかし、本当はその“壁”こそが学びのチャンス。苦手だと感じるポイントを分析し、課題を細かく設定すれば、意外と早く突破口が見つかることが多いものです。たとえば、遠近感が苦手ならパースの基礎を改めて勉強してみるとか、肌色や髪色の塗りが苦手ならプロのカラーリングを模写してみるとか。壁にぶつかるたびに“次に学ぶべきこと”が明確になるわけです。結局、才能のせいで描けないのではなく、単に必要な知識や練習が足りないだけかもしれません。
5. “作品を見せる場”を作るとやる気が続く
続けることが大事だとわかっていても、孤独な作業が長くなるとモチベーションが下がってしまうのは人間の常です。そこでおすすめしたいのが、“作品を見せる場”を積極的に作るということ。SNSの投稿や友人との交流でもいいし、地元のアートイベントや展示会に出展してみるのも良いでしょう。誰かに見てもらう機会があると、「もう一枚描いてみよう」というやる気が自然と湧いてきます。
私も、最初は地元の小さなカフェに絵を飾ってもらうところから始めました。それだけでも「どうやったら多くの人が興味を持ってくれるかな?」と工夫するようになり、次の作品へのモチベーションが生まれたのです。人の目に触れると、ポジティブな反応だけでなく改善点も見えてきますが、それは成長の糧になります。才能に関係なく、場数を踏んでいくうちに自然と描き慣れていくはずです。
6. “下手”なままでもいいから楽しむ
“下手なままで描く”ことを恥ずかしがる必要はありません。実は、描き続けていると“下手”だった頃の自分の絵を見る機会があり、「ああ、こんな風に描いていたんだな」と振り返ると同時に、その頃にしか出せない純粋な味わいを見つけることもあります。アートには、必ずしも“上手い”ことだけが価値になるわけではありません。むしろ、素朴で拙いタッチにこそ愛着を持ってもらえる場合もあるのです。
私自身、昔のスケッチを見返すと「今よりデッサン力は劣っているけど、この線の勢いや荒削りな色使いはすごく生き生きしているな」と感じることがあります。“完璧な完成度”を目指すあまり、描く楽しさを失ってしまうのはもったいない。下手であろうと、描いているうちにどんどん変化していく――そのプロセスこそが、絵を描く醍醐味ではないでしょうか。
7. “人とのつながり”が新しい道を開く
絵を描き続ける中で、人とのつながりが生まれることがあります。画材店のスタッフさんとの会話や、SNSでやりとりするアーティスト仲間、展示会で出会ったお客さん――そうした人脈が増えると、思わぬところから新しいお誘いやチャンスが舞い込むことも珍しくありません。才能があるかどうかよりも、“描き続けている姿勢”を周りが評価してくれることだってあるのです。
私も、出張サービスを始めるきっかけは、地元のイベントで作品を見ていただいた方から「うちのお店でも描いてみてよ」と声をかけられたことでした。もし“自分には才能がない”と勝手に決めつけて作品を隠していたら、その機会は永遠に巡ってこなかったと思います。才能よりも“描き続けて外に出す”ことが、道を拓く大きな要因になるのではないでしょうか。
8. “続ける”人にだけ見える景色がある
最終的に私が強調したいのは、「続ける人にしか見えない景色がある」ということ。ある程度描いた段階でやめてしまうと、その先に開けるはずだった新しい表現や技術、出会いなどはすべて消えてしまいます。“才能がない”と諦めるのは早すぎるんです。才能がなくても、ある日突然コツを掴んでスランプを脱出する瞬間が訪れるかもしれないし、描き続ける過程で自分だけのオリジナリティを確立できる可能性だってあるわけです。
私も、途中で諦めずに絵を描き続けてきたからこそ、今のように北海道を拠点に全国を巡る活動ができるようになりました。もちろん、今でも才能があると胸を張れるわけではありませんが、「続けていればこんな場所にまで来られるんだ」という実感は強く持っています。あなたも、今がどんな状況であれ、描く手を止めなければ必ず次の景色が見えてくるはずです。
いかがでしたでしょうか。“絵の才能なんて関係ない!大切なのは続けること”というテーマで、私自身の経験や周囲のクリエイターたちの姿を通じて感じたことをお話ししました。もう一度、要点を整理すると、
1. なぜ“才能”を気にしてしまうのか
2. “好き”をエンジンにすれば才能の壁は越えられる
3. 絵は“積み重ね”が成果に直結する
4. “壁”にぶつかったときは学びのチャンス
5. “作品を見せる場”を作るとやる気が続く
6. “下手”なままでもいいから楽しむ
7. “人とのつながり”が新しい道を開く
8. “続ける”人にだけ見える景色がある
絵を描く道のりは決して平坦ではありませんが、才能の有無がすべてを決定するわけではありません。描き続ける中で技術も磨かれ、機会も生まれ、仲間も増えていきます。自分のペースで地道に筆を握り続ける――それだけで、才能の壁を超える大きな一歩を踏み出せるのです。もし今「才能がないからやめよう」と思っている方がいれば、一度その思考を脇に置き、“描く”ことを楽しんでみてはいかがでしょうか。
あなたの“好き”という情熱が、いつの日か大きな花を咲かせるかもしれません。そして、そのときこそ「あのとき続けていてよかった」と心から思えるのではないでしょうか。
執筆者:寺野彬秀