絵を描くのが楽しくなくなった?その原因と対処法 | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 1月14日
- 読了時間: 7分
絵を描くのが楽しくなくなった?その原因と対処法 | 寺野彬秀
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道で活動している画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段は風景画や出張サービスを通じて多くの方と絵を描く楽しさを共有していますが、一方で「最近、絵を描くのが楽しくない」「描こうと思っても筆が進まない」という悩みをよく耳にします。私自身も、何度かスランプに陥り「もう絵を描きたくないかも…」と感じたことがありました。そんなときは、何が原因なのかをしっかり見つめ、対処法を試してみることで、再び創作の喜びを取り戻せることが多いです。
そこで今回は、「絵を描くのが楽しくなくなった」と感じる原因と、その対処法について8つの視点からお話ししてみたいと思います。自分の気持ちや状況を整理し、少しでも気持ちが軽くなるきっかけを見つけていただければ嬉しいです。
1. 自分の“理想”と“現実”のギャップに苦しんでいる?
絵を描くことが楽しくなくなる原因の一つに、“理想”と“現実”のギャップが大きくなりすぎることが挙げられます。描きたいイメージが頭の中にはあるのに、実際に描いてみると全然思い通りにならない…。その繰り返しでイライラしたり、自己否定感が強まったりしてしまうケースは少なくありません。
私も、最初の頃は「こんな美しい風景を思い通りに表現したい!」と意気込むのですが、実際のキャンバスを前にすると筆が空回りし、望んでいた色彩や迫力がなかなか出せませんでした。そういうときは、「理想が高い=成長のチャンス」と捉えてみるのがおすすめです。技術的な課題が具体的に見えてきたなら、一つひとつ練習して克服しながら、少しずつ理想に近づけていきましょう。理想と現実の差は、“成長するための目標”と考えると、前向きに取り組めるようになります。
2. “義務感”に追われていないか見直す
特にプロを目指している方や、SNSで作品を発表している方が陥りやすいのが、“義務感”のせいで楽しさを見失うパターンです。「毎日1枚描かなきゃ」「SNSで反応をもらわなきゃ」「お金を稼がなきゃ」――こうしたプレッシャーに押しつぶされると、そもそもの“描く喜び”がどこかに行ってしまいます。
この場合は、一度立ち止まって「本当に自分がやりたかったことは何か」を思い出すのが効果的です。義務感が強すぎるときは、あえて目標設定を緩めたり、描くペースを落としたりすることも必要かもしれません。私も、仕事として受けた依頼が立て込みすぎると「もう絵を描きたくない」という気分になることがありましたが、そんなときこそプライベートの時間に“完全に自由な落書き”をしてみることで、“好き”を再確認していました。
3. “飽き”のサインを見逃している
人間は、同じような作業を延々と続けていると必ず“飽き”がやってきます。イラストレーターやアニメ塗りに没頭してきた方が突然「もう描きたくない」と感じるのは、技術的にも慣れてきて刺激が少なくなったからかもしれません。これは決して悪いことではなく、“新しい刺激を求めるサイン”とも言えます。
飽きが来たと感じたら、思い切って違う画材や手法を試してみるのはいかがでしょうか。たとえば、デジタル中心で活動してきた方がアナログの水彩やアクリルに手を出してみるとか、逆にアナログメインだった方がデジタルへ挑戦してみるなど、全く違うスタイルにトライすると意外な発見があるものです。“飽き”は“変化を求めている”とも解釈できるので、それを前向きに活かしてみましょう。
4. 周囲の評価に左右されすぎている
SNS時代だからこそ顕著な現象ですが、周囲の“いいね”やフォロワー数、評価コメントに一喜一憂してしまうと、いつのまにか描く目的が“評価をもらうこと”にすり替わってしまうことがあります。そして、思ったほど反応が得られないと「もう絵を描いても意味がないんじゃないか」と感じてしまう…。
私もSNSを活用して作品を発信していますが、大事なのは「評価はあくまで一つの参考」であって、自分の価値をすべて左右するものではないという意識です。もし評価に振り回されて楽しくなくなっていると感じたら、一度SNSから離れてみるのも手かもしれません。しばらくの間、作品を“自分のためだけ”に描き、それを楽しむ時間を作ることで、純粋な創作意欲が戻ってくる場合も多いんです。
5. “描きたいテーマ”が見つからなくなった
描き続けていると、あるとき「もう描きたいものがない」「ネタが尽きた」といった状態に陥ることがあります。これはスランプの一種で、モチベーションが一気に下がってしまう原因になりかねません。そんなときは、外部からのインプットを増やすのが効果的です。
私の場合、風景画のアイデアが尽きたと感じたときは、普段行かない場所へ旅に出たり、ギャラリーや美術館を巡って他の作家の作品を観たりします。あるいは映画や小説など、全く別のジャンルからヒントを得ることも少なくありません。新しい刺激を受ければ、“こんな色彩で描いてみたい”“この構図を試してみたい”といったアイデアが自然と湧いてくるものです。引きこもって悩むよりも、一歩外に出て“見る”ことを意識してみましょう。
6. 過度なストレスや疲労が原因かもしれない
絵を描く楽しさが失われる原因として、実は過度なストレスや疲労が影響しているケースも多いです。仕事や学校、家庭の事情などで心身共に余裕がないと、創作活動に回すエネルギーが残らないことは珍しくありません。特に繊細な作業である絵は、精神的な安定が重要です。
もし体が疲れていると感じるなら、一度しっかり休息をとることを優先してください。無理に絵を描こうとしても集中できず、楽しいどころかイライラが募ってしまうだけかもしれません。十分に睡眠を取り、リラックスできる環境を整えたうえで、体力や気力が回復したタイミングでまた筆を握ってみると、「やっぱり描くのが好きだな」と思えることもあるでしょう。
7. “目標”の立て方を見直してみる
絵を描くモチベーションを維持するには、“適度な目標設定”が意外と大きな役割を果たします。たとえば「数か月後にミニ個展を開く」「SNSで連載的に毎週イラストを公開する」「コンテストに応募してみる」といった具体的な目標があると、適度な緊張感と意欲が湧きやすいです。
一方で、高すぎる目標や厳しすぎるスケジュールを設定してしまうと、追い込まれて楽しくなくなるリスクがあります。私も、過去に「毎週必ず大型のキャンバスを仕上げる!」と無謀な目標を立てて挫折しかけたことがありました。目標が悪いわけではないですが、“自分が継続できる範囲”の少し先を狙う程度にしておくと、達成感を得つつ創作を続けやすいですよ。
8. 新しい“描き方”や“環境”でリフレッシュ
絵を描くのが楽しくなくなったとき、思い切って環境を変えてみるのも有効です。たとえば、いつもは部屋の机で描いているなら、カフェや公園など場所を移してみる。アナログ画材が中心なら、デジタルを試してみる。逆にデジタル中心なら、久々に鉛筆や絵の具を触ってみる……こうした変化が“新鮮な気持ち”を呼び戻してくれることがあります。
私も、北海道の大自然の中でライブペインティングをやったり、他のアーティストとコラボして共同制作したりと、普段とは違うシチュエーションを作ることでマンネリを防いできました。新しい素材や道具を手に取るときは子どものようにワクワクするもの。こうしたリフレッシュは“初心”を思い出させてくれるので、創作の原点回帰にも役立ちます。
まとめると、絵を描くのが楽しくなくなった原因と対処法は、おおむね以下の8つに分けられます。
1. 理想と現実のギャップに苦しんでいる
2. 義務感に追われていないか見直す
3. “飽き”のサインを見逃している
4. 周囲の評価に左右されすぎている
5. “描きたいテーマ”が見つからなくなった
6. 過度なストレスや疲労が原因かもしれない
7. 目標の立て方を見直してみる
8. 新しい“描き方”や“環境”でリフレッシュ
絵を描く楽しさが薄れてしまうのは、決して珍しいことではありません。でも、それは“自分がなぜ描いているのか”を見直すチャンスでもあると思います。もしかしたら、単に疲れすぎているだけかもしれませんし、同じ技法にこだわりすぎて飽きが来ているだけかもしれません。原因がはっきりしてくれば、対処法も自然と見つかるはず。
無理して描き続けるより、一度休む勇気も大切ですし、新しいことに挑戦するのも良い選択肢です。最終的には、“好き”という気持ちが戻ってくる形を探せばいいのだと思います。焦らず、自分らしいペースで向き合ってみましょう。「また筆を握ってみようかな」と思える日がきっと訪れるはずです。
執筆者:寺野彬秀