売れない時期をどう乗り越える?画家のリアルなサバイバル術 | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 2月11日
- 読了時間: 7分
更新日:2月18日
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道を拠点に活動している画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。もともとはまったくの無名で、美術大学を出たわけでもなければ、特別な師弟関係で学んだ経験もありませんが、一念発起して画家を志し、早数年が経ちました。そんな私が多くの方から相談を受けるのが「絵が売れない時期、どう乗り越えればいいのか?」という悩みです。実際、私も売れないどころか、まったく注目されない時期が長く続いたことがあります。
この“売れない時期”は、画家やアーティストにとって精神的にも経済的にも厳しい期間ですよね。そこで今回は、自分や周囲の画家仲間が行ってきたサバイバル術や気持ちの整理方法を8つの視点からお話しします。もしあなたがいま「作品が売れなくて苦しい…」「どうやってこの時期を乗り越えればいいんだろう?」と感じているなら、何かしらのヒントになれば幸いです。
1. 売れない理由を“客観的”に分析してみる
作品が売れないとき、真っ先に自分の才能不足を疑いがちですが、それだけが理由とは限りません。まずは“客観的”に「どこが問題なのか」を洗い出す作業が有効です。たとえば、価格設定が合っていないのか、作品の見せ方が悪いのか、ターゲットに届く展示場所や販売チャネルを選べていないのか――これらを冷静に見直してみると、意外な発見があることも。私も初めて個展を開いたとき、値段を高くしすぎていたため、まったく作品が売れなかった経験があります。その後、他の作家の価格帯を研究し、自分の実力や経歴とのバランスを考え直したところ、少しずつ買い手が付き始めました。主観的に落ち込むだけではなく、要素を細分化して検証することで、改善策が見えてくるはずです。
2. “他の収入源”を確保して安心感を得る
売れない時期が続くと、経済的な不安から創作意欲も落ち込んでしまうものです。そこでおすすめなのが、“他の収入源”を確保すること。アルバイトやパートタイムの仕事、あるいは別のクリエイティブな業務との兼業など、方法はいろいろ。私は初期のころ、地元の企業でアルバイトをしながら絵を描き続けていました。これにより最低限の生活費を確保し、余った時間とエネルギーを創作に注げたことで、精神的にも安定しやすかったんです。絵だけに頼らなくてもいいという安心感があると、作品のクオリティやアイデアにも良い影響が出やすいと感じます。
3. “売れない=価値がない”ではない
作品が売れないとき、「自分の絵には価値がない」と結びつけて考えてしまう方が多いですが、これは必ずしもイコールではありません。市場やタイミングの問題、展示場所の客層とのミスマッチなど、さまざまな要因で売れ行きが変わってくることも珍しくありません。私も、まったく売れなかった作品が、別のイベントやオンラインギャラリーに出したらあっさり売れた、という経験を何度かしています。売れ行きが悪いのは自分の努力不足かもしれませんが、一概に「価値がない」とは言い切れないのです。大切なのは、“なぜ売れなかったのか”を冷静に探り、新しい場所や方法を試すフットワークの軽さかもしれません。
4. “作品数を増やす”戦略もあり
思うように売れない時期でも、とにかく作品数を増やしていく戦略は有効です。数をこなすうちに、表現力が磨かれるだけでなく、何かのきっかけでポンと売れる作品が生まれる可能性が高まります。私が出張サービスを始めたころは、“作品数をとにかく増やす”ことを目標にして、1か月に10枚は新作を描いていました。するとその中の一部が思わぬところで目に留まり、新しい受注につながったり、イベントへの招待を受けたりしたのです。売れないからといって筆を止めてしまうと、可能性が閉ざされてしまうかもしれません。量を作り出すことでチャンスを増やす――これは地道ですが、効果的なサバイバル術の一つです。
5. “ファン”を意識したコミュニケーション
売れるかどうかは、作品の良し悪しだけではなく、“ファンとのコミュニケーション”にも大きく左右されます。SNSやブログなどを活用して、制作過程や作家としての想いを発信してみると、作品そのものだけでなく作者のストーリーに共感してくれる人が増える場合があります。私も描いているときの裏話や、北海道の自然への思いをSNSで発信し始めてから、「この画家さんの生き方や感じ方が好きだから絵を買いたい」という人が現れるようになりました。作品だけを見て判断するのではなく、作家がどんな思いで描いているかが購入の決め手になることも多いんです。ファンを意識したコミュニケーションは、辛い売れない時期にモチベーションを保つためにも大切です。
6. “値段設定”を再考する
先ほど少し触れましたが、値段設定は売れ行きに直結します。自分の作品を高く評価してほしいあまり、高めの価格をつける作家さんがいますが、それが売れない理由になっているケースもあれば、逆に安すぎることで「この作品は本当に価値があるのかな?」と疑われる場合もあります。私の場合、初期は安すぎて「質が低いんじゃないか」と敬遠されたり、高すぎて「無名の作家に払えない」と思われたり、失敗を繰り返しました。やはり、他の作家さんの相場を研究したり、サイズや制作時間、画材費用などを加味した適切な価格帯を探ることが重要だと痛感しています。売れない時期こそ、値段設定を見直す絶好のタイミングかもしれません。
7. “一発逆転”よりも“地道な活動”が効く
絵が売れなくなると、「どこかで一気に大注目されて売り上げが爆上がりしないかな…」と夢を見てしまうこともあるでしょう。でも実際には、一発逆転のような劇的な成功例はそう多くありません。むしろ、地道な活動の積み重ね――地元のイベントや小さな展示会への出展、SNSの更新など――が徐々に実を結ぶケースがほとんどです。私も最初は大規模なアートフェアに出るなど大きな一発を狙っていましたが、ほとんど手応えがなく。その後、小規模のイベントやカフェ展示をコツコツこなし、そこで得た人脈や評価から仕事が広がっていったんです。一発逆転の夢を追うより、堅実に活動を続けるほうが長い目で見れば確実です。
8. “描き続ける先”にしか見えない道がある
最後に、何より強調したいのは、“描き続ける先”にしか見えない道があるということ。売れない時期は本当に辛いですが、そこで諦めてしまうと得られない未来が必ずあります。私も一度やめようかと思った時期がありましたが、出張サービスを思いついたのはまさにその頃。「自分が描いて喜んでもらえる場を、こちらから作りに行こう」という発想が生まれた結果、今の活動へとつながりました。描き続けているからこそ、新しい出会いやアイデア、企画が湧いてくるのだと思います。売れない時期は成長のターニングポイントでもあるので、“続けている人”だけがその先の景色を味わえるのです。
ここまで、「売れない時期をどう乗り越える?画家のリアルなサバイバル術」というテーマで8つのポイントをお伝えしました。もう一度、簡単にまとめると、
1. 売れない理由を“客観的”に分析してみる
2. “他の収入源”を確保して安心感を得る
3. “売れない=価値がない”ではない
4. “作品数を増やす”戦略もあり
5. “ファン”を意識したコミュニケーション
6. “値段設定”を再考する
7. “一発逆転”よりも“地道な活動”が効く
8. “描き続ける先”にしか見えない道がある
絵が売れない時期は、精神的にも経済的にも厳しいものです。しかし、その辛さを糧にして分析と改善を重ねれば、作品のクオリティや見せ方は確実に磨かれていきます。また、別の収入源を確保しておけば余裕が生まれ、作品を作る楽しさを再発見できることもあるでしょう。一発逆転を狙うより、小さな成功と学びを積み重ねていくことが、結果的に大きな成果につながると私は信じています。
もしあなたが今、売れない時期に苦しんでいるとしても、“まだ描きたい”という気持ちがあるなら諦めるのはもったいない。地道に描き続け、工夫を重ねるうちに、きっと新しい道が見えてくるはずです。描いた絵は必ずどこかで誰かの目に留まる可能性があるし、その出会いが次のステップへとつながるかもしれません。どうか売れない苦しさに押しつぶされず、あなたなりのペースで続けてみてください。未来には、あなたの創作を求める人が待っているかもしれません。
執筆者:寺野彬秀