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背景が苦手な人へ!簡単に描けるようになるコツ | 寺野彬秀

  • 執筆者の写真: 寺野彬秀
    寺野彬秀
  • 2024年12月21日
  • 読了時間: 7分

こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段は風景画や出張サービスでのライブペインティングなど、さまざまな形で絵を描いているのですが、活動を続ける中でよく相談を受けるのが「背景が上手く描けない」という悩みです。人物やキャラクターはまだしも、いざ背景となると手が止まってしまうという方は意外と多いのではないでしょうか。


しかし、背景はキャラクターや主役のモチーフを引き立てるための重要な要素でもあります。適当に描いてしまうと、全体の絵の完成度が下がってしまうことも…。そこで今回は、「背景が苦手な人でも、簡単に描けるようになるコツ」をいくつかご紹介したいと思います。初心者から中級者の方に特に役立つ内容を意識していますので、ぜひ参考にしてみてください。


1. 背景の“目的”を明確にする


背景を描くとき、まずは「この背景は何のためにあるのか」を考えてみましょう。主役を引き立てるためなのか、世界観を表現するためなのか、ストーリーを補完するためなのか――目的が違えば、描き方や描き込みの度合いも変わってきます。


私自身、北海道の風景画を描くときは、背景そのものが主役になる場合が多いです。しかし、キャラクターや人物が主役の場合には、その存在を活かすようなシンプルかつ雰囲気のある背景を心がけています。背景が苦手な方は、まず「この絵で何を見せたいのか」をはっきりさせると、色や描き込みの方向性が自然と定まるはずです。


2. 大まかな“構図”を先に決める


背景を描く際によくある失敗は、細かいところから描き始めてしまい、全体のバランスが崩れるパターンです。最初に大きな構図をざっくりととって、どこに何を配置するかを決めておきましょう。遠景、中景、近景の三つのレイヤーを意識すると、奥行きが出しやすくなります。


たとえば、山やビルなどの遠景をまずシルエットだけで配置し、中景に木や街並みを置き、近景には地面や人物の足元などを設定する――という具合です。私も風景画を描くときはまず空や地面のラインを決め、次にメインとなる建物や木の位置を決め、その後細部を描き込んでいくようにしています。


3. “パース”をざっくり押さえる


背景を描くのが苦手な方の中には、パース(遠近法)がよくわからないという人も多いでしょう。パースは正確に学ぼうとするとやや敷居が高く感じるかもしれませんが、最低限のルールをざっくりと押さえておくだけでも絵の説得力が大きく変わります。


まずは水平線(ホライゾンライン)の位置を決め、消失点を1~2箇所設定してみるだけでも違います。建物や道路のパースがまったく取れていないと、背景が“歪んでいる”印象を与えてしまいがちです。私も風景画では、主線を引く前にスケッチ段階で消失点を取って、全体の構造を大まかに決めておくようにしています。慣れないうちは簡単な箱や道路などで練習し、少しずつ感覚をつかんでいくと良いでしょう。


4. 最初は“シルエット”だけ描いてみる


いきなり詳細な背景を描こうとすると、どこから手をつけていいかわからなくなってしまいます。そんなときは、まず黒一色や単色で建物や木々をシルエットとして描いてみるのがおすすめ。遠景や中景のオブジェクトがどのような形をしているのか、輪郭だけで把握しやすくなります。


私もスケッチブックにシルエットだけの風景を何枚も描き、なんとなく全体のバランスが良いものを本番の作品に活かす、というやり方をよくしています。シルエットを描いているうちに、「この建物は思ったより背が低い方が構図的にいいな」「この木を少し右にずらした方が見栄えがいい」といった調整点が見えてくるのです。


5. “空”と“地面”だけで雰囲気を作る


背景を簡単に見せたいなら、空と地面(あるいは床)だけで雰囲気を作るのも手。空の色合いや雲の形で時間帯や天候を表現し、地面の質感や影で空間を演出する――それだけでも背景としては十分成立する場合があります。


たとえば、夕焼け空をオレンジやピンクでグラデーションにし、地面に長い影を入れるだけで、一気に“夕方の雰囲気”が伝わります。私は北海道の夕焼け空を描くとき、ベースカラーを一度塗りしてから少しずつ色味を重ねるようにし、空の上部は青みを残しつつ下部は濃いオレンジにグラデーションでつなげています。たったそれだけでも、背景の情報量としてはかなり豊かになるのです。


6. 質感は“パターン”で乗り切る


背景に描かれる建物や木、草原などをすべて丁寧に描き込むのは大変な作業ですし、時間がいくらあっても足りないこともあります。そんなときは、質感を“パターン”で表現する方法を試してみましょう。たとえば、木々の葉っぱを個別に描くのではなく、“もこもこ”とした形のパターンを使う。芝生や石畳も、一つずつ描くのではなく一定の模様やテクスチャを何度も繰り返すことで表現できます。


私もアクリルで描く際は、スポンジやドライブラシなどを使って葉っぱや雲の質感をパターン的に表現することがあります。一見手抜きに思えるかもしれませんが、この方法で全体の統一感が保たれたり、逆にアーティスティックな味わいが出ることもあるので侮れません。どこまで細密に描くかは、絵のテーマや自分のスタイルに合わせて調整していきましょう。


7. “主役”を際立たせる配色


背景が苦手な方の中には、「せっかく描いてみたけど、主役が埋もれてしまった…」という悩みを持つ人も多いです。そこで重要になるのが、配色やコントラストの使い方。背景を主役の色とかぶらないように調整することで、主役がしっかり際立ちます。


たとえば、キャラクターが鮮やかな赤い服を着ているなら、背景は補色の緑系を使ったり、淡いパステルトーンでまとめたりすると良いでしょう。私も、自分が描く絵で主役が黄色系の服を着ていれば、背景には紫や青みを意識して取り入れるなど、色の相性を考えながら調整しています。また、背景を少し暗めにして主役だけを明るくするなど、明暗差で主役を際立たせる方法もあります。


8. “写真参考”で自分の引き出しを増やす


最後に、背景の資料を増やすためにも、日頃から写真や実物をよく観察する習慣をつけることをおすすめします。風景写真を集めたり、実際に外に出て自分の目で見ながらスケッチや撮影をすることで、「建物や木が重なったときのシルエットはこうなる」「光が当たる角度で色味が変わる」といったリアルな情報が手に入ります。


私も、北海道の自然や街並みを散歩しながらスマホで写真を撮り、それを後々の背景づくりに活かすことが多いです。もちろん丸々模写してもいいですし、複数の写真を組み合わせてオリジナル背景を作ってもいいでしょう。とにかく“引き出し”を増やしておくと、背景制作で困ったときにすぐに取り出すことができます。


いかがでしたでしょうか。背景が苦手な方へ向けて、簡単に描けるようになるコツをいくつかご紹介しました。もう一度まとめると、


1. 背景の目的を明確にする

2. 大まかな構図を先に決める

3. パースをざっくり押さえる

4. 最初はシルエットだけ描いてみる

5. 空と地面だけで雰囲気を作る

6. 質感はパターンで乗り切る

7. 主役を際立たせる配色

8. 写真参考で引き出しを増やす


これらを意識するだけで、「背景がどうしても描けない…」という悩みが少しずつ軽くなるはずです。慣れないうちはうまくいかないこともあるかもしれませんが、練習を積むうちに自分なりの背景の描き方が見えてきます。背景が描けるようになると、絵の世界観が格段に広がり、作品全体の魅力も増していくことでしょう。


ぜひ気軽にチャレンジしてみてくださいね。自分が思い描く空間を自由に表現できるようになると、描く楽しさがさらに倍増すること間違いありません。


執筆者:寺野彬秀

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