独学で画力を上げるには?毎日できるトレーニング法 | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 2024年12月11日
- 読了時間: 7分
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。美術大学や専門学校といった正規の教育機関に通わず、独学で絵を学ぶ道を選んだ方は多いのではないでしょうか。私自身も特別な師匠や学歴を持たず、試行錯誤を繰り返しながら画力を磨いてきました。独学だからこそ自由度は高いものの、一方で何をどう練習すればいいのかわからず、途中で挫折しそうになった経験も少なくありません。
しかし、毎日のちょっとした積み重ねと、的を絞ったトレーニングを継続すれば、独学でも確実に画力は向上していきます。そこで今回は、私自身が試し、効果を感じられた「毎日できるトレーニング法」を中心にご紹介したいと思います。忙しい方でも取り入れられる内容をできるだけ具体的にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。独学ならではの苦労もありますが、その分、得られる達成感は大きいですよ。
1. まずは“描く習慣”を確立する
独学で画力を伸ばす上で、最も大切なのは「毎日描く」ことを習慣化することだと私は考えています。たとえば1日10分、15分でも構いません。寝る前や通勤前など、生活のどこかに“描く時間”を組み込むイメージです。最初から何時間も確保しようとするとハードルが高くなり、続けるのが苦しくなってしまいます。
私も社会人として働きながら絵を描き始めたときは、起床後の30分だけをスケッチタイムにしていました。慣れないうちは短い時間でも十分です。大切なのは、「描くのが当たり前」というリズムを作り上げること。そのうち、少しずつ自然に描く時間を増やしたくなってくるはずです。
2. “観察力”を鍛えるスケッチ
画力を上げるには、何よりも「よく見る」ことが基本です。そこでおすすめなのが“観察スケッチ”。身近なもの、たとえばコップやスマホ、机の上の小物などをじっくり観察しながら、短時間でスケッチしてみてください。輪郭だけでなく、光の当たり方や微妙なカーブ、質感など、細部まで目を配ることで、見えていなかった部分が浮き彫りになります。
私自身も、朝のスケッチ習慣では、手に取ったものをできるだけ“ありのまま”に描く練習をしていました。描き終えたあとで実物と比べてみると、「ここが歪んでる」「陰影が少し浅い」など、改善点がはっきりわかるのが良いところ。観察力が向上すると、どのようなテーマでも表現の説得力が増してくると実感しています。
3. クロッキーで“スピード×把握力”を磨く
ゆっくり観察するスケッチと並行して、クロッキー(速写)を取り入れると効果的です。モデルや動物、風景などを短時間で捉える練習は、瞬時に特徴をつかみ、要点を描く能力を高めてくれます。1分、2分、5分といった制限時間を設けて描くのもおすすめです。
私は人物の動きや動物のポーズを描くのが苦手でしたが、クロッキーを続けるうちに、「最小限の線でイメージを捉える」コツが少しずつ身につきました。ときには電車の中やカフェで周りの人をこっそり観察(マナーに気をつけつつ)しながら、シルエットだけ素早く描いてみることもありました。スピードが求められるクロッキーは、筆運びのリズム感や構図力も鍛えてくれるので、ぜひ毎日の練習に加えてみてください。
4. デッサンで“立体感”を追求する
独学で絵を学ぶ方が見落としがちなのが、正統派の“デッサン”。自由に好きなものを描くのは楽しい反面、どうしても自分の苦手分野を後回しにしてしまう傾向があります。立体感や陰影のつけ方が曖昧だと、どんなに色彩センスが良くても、全体として“絵が弱い”印象になってしまうことがあります。
私は道具を最小限にして、鉛筆と紙だけでじっくり時間をかけて描くデッサンを定期的に取り入れてきました。形を正確にとらえる力、光と影のニュアンスを再現する力は、デジタルでもアナログでも必ず役立ちます。初めのうちは「面倒だな」と感じるかもしれませんが、基礎体力を養う意味で、定期的にデッサンの時間を設けることを強くおすすめします。
5. 模写で“お手本”から学ぶ
好きな画家やイラストレーター、漫画家などのお手本を選んで模写をするのも、独学者には効果抜群の練習法です。優れた作品を細部まで真似ることで、自分になかった描き方やテクニックを吸収しやすくなります。ただし、模写する際は「なぜこうなっているのか」を意識的に考えながら描くことがポイントです。
私が風景画を始めた頃は、世界的に有名な画家の作品をひたすら模写していました。筆遣いや色の重ね方、構図の妙など、自分では思いつかない発想に何度も驚かされました。模写は単なるコピーと違い、分析的に学ぶ姿勢を持つほど大きな収穫があります。描き終えたら、模写元と比べてどこが違うか、どこが同じかをチェックし、気づいた点を自分の表現に活かすと良いでしょう。
6. テーマやジャンルを限定しすぎない
独学だと、どうしても好きなテーマや得意ジャンルばかり描きがちですよね。しかし、画力全体を底上げしたいのであれば、ジャンルを限定しすぎないほうが良いと私は思います。風景しか描かない、人物しか描かない――と絞りすぎると、視野や技術が広がりにくいこともあります。
私も最初は風景画に集中していましたが、あえて人物画や動物画、抽象画などに挑戦してみることで、新たな筆遣いや構図、色彩感覚を学べました。意外なところで「このやり方、風景画にも応用できるかも」とひらめくこともあります。好きな分野を極めるのは素晴らしいですが、その前段階で幅広く経験しておくことが、長期的には大きな財産になるでしょう。
7. 作品を“客観視”する仕組みづくり
独学の最大の難点は、自分だけの世界に閉じこもってしまいがちなこと。そこで意識的に作品を客観視する工夫が必要です。たとえば、SNSやオンラインコミュニティに参加して作品を公開し、フィードバックをもらう。あるいは自分で撮った写真や鏡を使いながら、絵を左右反転して確認してみる――など、さまざまな方法が考えられます。
私は、描いた絵をスマホで撮影してみる習慣を持っています。画面越しに見ると、キャンバスのときとは違った印象になり、「構図が偏ってる」「ここだけ異様に暗い」など、問題点を客観的に見つけやすくなるのです。また、SNSに投稿すると「ここがいいね」「ここをこうしたら?」といったコメントをもらえることもあります。複数の視点を取り入れるほど、独学で見落としがちな部分を補えるはずです。
8. 継続こそが最大の武器
最後に、当たり前のようでいて最も重要なのが「継続する」こと。毎日短い時間でもいいので、描き続けることが画力を上げるための何よりの近道です。上達のペースは人それぞれですが、コツコツ積み重ねるうちに、ある日突然「以前は描けなかったものが描けるようになった」と気づく瞬間が訪れます。
私も何度かスランプに陥り、そのたびに「もう絵を描くのをやめようか」と思ったことがありました。しかし、わずかでも筆を握り続けていると、少しずつでも成果が出てくるんですよね。独学だからこそ、自分が積み上げた結果がダイレクトに実感できるのは大きなメリットだと思います。挫折しそうになっても、まずは描き続ける。そこに勝る練習法はないと言っても過言ではありません。
いかがでしたでしょうか。独学で画力を上げるための「毎日できるトレーニング法」をご紹介しました。もう一度まとめると、
1. 毎日の“描く習慣”を作る
2. 観察スケッチで細部を見る目を養う
3. クロッキーでスピードと把握力を磨く
4. デッサンで立体感をしっかり把握する
5. 模写を通じて名作から学ぶ
6. ジャンルを限定しすぎず幅広く挑戦する
7. 作品を客観視できる仕組みを作る
8. 継続こそが最大の武器
これらを組み合わせながら自分に合ったやり方を見つけ、少しずつでも毎日積み重ねていけば、必ず画力は向上します。独学には孤独や不安がつきまといがちですが、自分で自由に学び方を決められるのは大きな魅力。興味がわいたことは何でも試してみる積極性が、上達への一番の鍵になるはずです。
あなたの描く未来が、色鮮やかで力強いものになりますように。焦らず、楽しみながら描く日々を続けていけば、きっと数年後には驚くほどの成長を遂げていることでしょう。諦めずに頑張ってくださいね。
執筆者:寺野彬秀