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鉛筆1本でここまで描ける!シンプルな画力向上法 | 寺野彬秀

  • 執筆者の写真: 寺野彬秀
    寺野彬秀
  • 1月8日
  • 読了時間: 7分

こんにちは。私は1980年生まれ、北海道で活動している画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段はアクリルや油彩、デジタルなど、様々な画材や手段を使って絵を描いていますが、その土台となっているのは意外にも“鉛筆”だったりします。鉛筆というシンプルな道具だからこそ得られる基礎力は、どんな画材を使うときにも大きな武器になると感じています。今回は「鉛筆1本だけでも、ここまで画力を上げられるんだ!」という視点から、シンプルかつ効果的な練習法を紹介してみたいと思います。高価な道具をそろえなくても、ちょっとした工夫と継続で大きな進歩が得られるはずです。


1. なぜ鉛筆なのか


鉛筆は、どこにでも売っていて、誰もが一度は使ったことがある道具ですよね。ですが、多くの人がその可能性を十分に引き出しきれていないと感じます。鉛筆が優れている点は、まずコストが安くて手に入りやすいこと、そして芯の硬さによって幅広い表現ができることです。H系の硬めの芯を使えば精密な線を引きやすいし、B系のやわらかい芯なら濃淡の幅が広くなります。慣れてくると、1本の鉛筆でも“線画”から“塗り込み”まで意外と多彩な描き方が楽しめるんですよね。


私が北海道の自然を描くときも、最初のスケッチは鉛筆で始めることが多いです。シンプルな道具だからこそ、余計なことを考えずに“観察する力”や“構図づくり”に集中できるメリットを痛感しています。豪華なセットをそろえる前に、鉛筆1本を味方につけるだけで、絵の基礎力は格段に伸びるはずです。


2. まずは“線”を極めてみる


鉛筆を使った画力向上の第一歩として意識したいのが“線”です。イラストや絵画を描くうえで、輪郭線や筆致(筆づかい)の基礎となるのが、この線のコントロール。そこでおすすめなのが、“線だけで対象を描く”という練習です。影や塗り込みをしないで、輪郭や大まかなパーツの形を“線”だけで表現してみるわけですね。


このときポイントになるのは、線の強弱や方向を意識すること。たとえば、手前にあるものは太めの線で描き、遠くにあるものは細めの線で描くと、奥行きのある絵になりやすいです。私も、朝の時間にコップやペン立てなど身近なモチーフを線画だけでササッとスケッチする“線画タイム”を続けていたことがありますが、それだけで形を捉えるスピードが上がり、本番の制作でも迷いが減りました。


3. “陰影”をマスターして立体感を生む


線に慣れてきたら、次は“陰影”に挑戦しましょう。鉛筆デッサンならではの魅力は、モノクロでありながら豊かな立体感や質感を表現できること。B~4B程度のやわらかめの芯を使い、明るい部分から徐々に暗い部分を塗り込むことで、自然なグラデーションを作っていきます。慣れないうちは、球体や立方体といったシンプルな形から練習すると、光源の位置や影の落ち方を理解しやすいでしょう。


私が特に意識しているのは、ハイライト(光が当たる最も明るい部分)を決めて、そこを残しながら周りのトーンを少しずつ濃くしていくことです。陰影を描いていると、光と影の関係だけでなく、物体の曲面や質量をイメージしながら手を動かすようになるので、より“形”を本質的に理解できるようになります。


4. “観察力”を鍛えるためのスケッチ習慣


鉛筆での練習は、何より“観察力”を鍛えるトレーニングとして最適。絵が上手くなりたいなら、対象をよく見る力が欠かせません。そこで私がよく提案するのが、「1日1スケッチ」という習慣です。とにかく毎日、身近なものを1つスケッチしてみる。15分程度で構わないので、テーブルの上のカップやスマホ、ペンケースなどを、よく見ながら鉛筆で描いてみてください。


観察するときは、輪郭線だけではなく「この部分は少し凹んでいる」「光が当たって明るくなっている」という細かい変化を見逃さないようにするのがコツです。毎日続けていくうちに“形を捉える感覚”がみるみる磨かれていきますし、自然と立体感や質感の表現にも慣れてくるはずです。


5. “模写”でプロの技術を盗む


イラストや漫画、あるいは名画など、好きな作品を模写するのも、鉛筆を使って画力を伸ばす効果的な方法です。模写のポイントは、ただ目分量でコピーするのではなく、「なぜこういう線になっているのか」「どういう構図で配置しているのか」を分析的に考えながら描くこと。プロの技術やセンスを“盗む”感覚ですね。


私も学生時代、好きな画家のデッサン作品を何枚も模写して「この陰影の塗り込み方はこうやってるのか!」と驚いたことがあります。模写を通じて、普段の自分にはない視点やテクニックを身につけられるのです。また、模写を始めると意外なほど「自分の苦手な部分」が浮き彫りになるので、次にどんな練習をすればいいかも明確になってくるでしょう。


6. “全体→部分”の順番で描く


鉛筆だけで描く際に陥りがちなのが、細部から描き込みすぎて全体のバランスを崩してしまうこと。そこで大事なのは、“全体→部分”の順序を守ることです。まずは大きな形や構図をざっくりと取って、それから少しずつディテールを加えていく。これだけで、描き上がったときに「なんか左右が歪んでる…」などの失敗を大幅に減らせます。


私が風景スケッチをするときも、まず地平線や建物の大まかな位置をササッと線で示し、パースを確認してから窓や木々、人物などの細部を描き込むスタイルです。全体の構図をしっかり把握したうえでパーツを配置するイメージですね。この方法は他の画材でも応用できるので、鉛筆デッサンの段階から習慣にしておくとあとあと役に立ちます。


7. “フィードバック”と“振り返り”を取り入れる


鉛筆1本での練習を続けていると、「本当に上達しているのかな?」と不安になることがあるかもしれません。そんなときは、定期的に自分の作品を見返したり、他人からフィードバックをもらったりするのがおすすめです。たとえばSNSにアップしてみる、友人に見せてみる、あるいは美術サークルやオンラインコミュニティで意見を交換するなど、いろいろな方法があります。


私も、自分では気づかなかったミスや改善点を他人の指摘でハッとすることがよくあります。また、自分の過去のスケッチを並べて見比べてみると、「あ、半年前と比べると輪郭線がブレなくなってる」「陰影の階調が増えてる」といった成長を実感でき、モチベーションが上がります。練習の量を増やすだけでなく、“フィードバック”と“振り返り”の習慣を組み合わせると、効率的に上達を目指せるでしょう。


8. “飽きる”前に新しい課題を取り入れる


最後に、鉛筆1本の練習を続けていると、どうしても飽きが来る瞬間があるかもしれません。そんなときは、同じ方法を繰り返すだけでなく、少しずつ新しい課題を取り入れてみるといいです。たとえば、最初は静物(コップや花瓶)を描いていたのなら、次は人物のクロッキーに挑戦してみる。風景を描いてみる。あるいはパースをしっかり取り入れた建築物のスケッチをしてみる…といった具合に、テーマを変えるのです。


私も、人間の手や足など難易度の高いパーツをあえて描いてみたり、動物園に行って動物スケッチをしたり、テーマを変え続けながら鉛筆デッサンの幅を広げてきました。こうした“変化”が刺激になって、新たな発見や上達への意欲をかき立てるんですよね。飽きる前に新しい課題を取り入れるのが、継続するコツと言えるでしょう。


まとめると、鉛筆1本だけでも画力を大いに向上させられる理由や方法は、大まかに以下の8点に集約されます。


1. なぜ鉛筆なのか

2. まずは“線”を極めてみる

3. “陰影”をマスターして立体感を生む

4. “観察力”を鍛えるためのスケッチ習慣

5. “模写”でプロの技術を盗む

6. “全体→部分”の順番で描く

7. “フィードバック”と“振り返り”を取り入れる

8. “飽きる”前に新しい課題を取り入れる


華やかな画材やデジタル技術も素敵ですが、シンプルな鉛筆だからこそ磨かれる“基礎力”は、のちのち他の表現にも必ず活きてきます。絵を描き始めて間もない方や、改めてデッサンを見直したい方は、ぜひこの鉛筆練習法を試してみてください。最初は思うようにいかないかもしれませんが、日々少しずつ続けていけば、気づかないうちに形を正確に捉えられるようになり、明暗の調整がスムーズになり――と、驚くほどの成長を実感できるはずです。


「鉛筆1本でここまで描ける!」という喜びは、きっとあなたの創作意欲を大きく引き上げるきっかけになるでしょう。ぜひ気軽に取り組んでみてくださいね。


執筆者:寺野彬秀

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