絵が下手でも大丈夫!続けることで見える景色がある | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 1月22日
- 読了時間: 7分
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。普段は風景画を中心に制作しながら、出張サービスやSNSを通じて多くの方に絵の魅力を伝えています。そんな活動の中で、よくいただく悩みのひとつが「自分は絵が下手だから、描くのをやめようかと思う」というもの。自分の絵を「下手」と感じるからこそ、恥ずかしかったり、誰にも見せられないと感じたり――その気持ちはとてもよくわかります。実は、私自身も学生時代に同じような悩みを抱えていたことがありました。
しかし、「絵が下手でも大丈夫!」というのが私の結論です。なぜなら、下手かどうかよりも“描き続ける”ことこそが、最終的に絵を大きく成長させ、思わぬ景色を見せてくれるからです。今回は、「絵が下手だから描くのをやめよう」と思っている方に向けて、続けることで見えてくる景色やメリットについてお話ししてみたいと思います。あなたの絵が、今どんな状態であれ、一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
1. 「下手」と思うのは、なぜ?
まず、「自分は絵が下手」と感じるのは、どこから来る感情なのでしょうか。多くの場合、周囲やSNSで見かけるレベルの高い作品を目にして、「自分にはあんなに描けるわけがない」と比較してしまうのが原因かもしれません。また、思い通りのイメージが表現できないことにも、下手だと感じる理由がありますよね。
私自身、SNSを通じて多くの素晴らしい作家さんの作品を見る機会が増え、「自分の絵はまだまだだな…」と落ち込むことがありました。でも、そこで大切なのは「比較すること自体は悪いことではないが、それで自分の価値を決めてしまわない」という姿勢。上手い絵は刺激にもなりますが、自分を否定する材料ではないのです。
2. “下手”な絵にだって魅力がある
よく考えてみると、絵の魅力は必ずしも技術的な完成度だけに依存しないと思いませんか? たとえば子どもの描く絵は、いわゆる“上手さ”で言えば拙い部分が多いかもしれませんが、大人にはない自由な発想や思い切りの良さ、愛嬌などがあってとても魅力的です。
実際、私も個展などでお客様と話していると、「この絵、線がちょっと歪んでいて味があるね」なんて言われることがあるんです。完璧に正確なパースやデッサンだけが評価されるわけではなく、むしろ不完全さからくる独特のタッチに惹かれる人もいる。だからこそ、“下手”という言葉に縛られすぎず、今の自分にしか描けない味わいや個性を大切にしたいものです。
3. 続けることで“好き”が深まる
絵を描くのが下手だと感じるときこそ、「でも絵を描くのが好き」という気持ちを思い出してみるのが大事です。もし、本当に好きなのであれば、上手いか下手かとは関係なく続けていく過程で、自然と“好き”が深まっていくはず。たとえば、「デッサンが苦手だからこそ練習してみよう」「色塗りが下手だから新しい塗り方を試そう」と前向きに捉えられるかもしれません。
私も、最初は油彩で上手く塗れなくて悩んだのですが、「描くの自体は好きだからもう少し頑張ってみよう」と試行錯誤しているうちに、いつの間にか塗りのテクニックが身についていました。結果的に、好きな絵をずっと続けられる喜びがさらに増したんです。下手だからこそ学ぶ意欲が湧くという面は、大いにあると思います。
4. “下手”から生まれる成長の実感
絵が下手な状態からスタートすると、逆に“成長の実感”を得やすいというメリットもあります。少し練習を重ねると、「昨日より描きやすくなった」「この部分だけは前よりマシになってきた」という気づきを得られやすいんです。上手くなってくると逆に細かい点が気になって、「成長してるのかな?」と実感しづらくなることもあります。
たとえば、毎日少しずつスケッチを続けていくと、数週間前に描いた絵と比べて「あ、形を捉えるのが早くなったかも」と感じる瞬間がある。その積み重ねが自信に繋がっていくんですね。最初は“下手”でも、その分だけ伸び代は大きいと考えてみてはいかがでしょうか。
5. 新しい可能性に出会うための“きっかけ”にもなる
絵が下手なまま描き続けると、時には「このままではダメだ」と焦りを感じることもあるかもしれません。しかし、その焦りこそが新しい可能性への扉を開くきっかけになることがあります。たとえば、デッサン力に限界を感じてきたら、本格的に教室に通ったり、動画や書籍で学んだりする動機になりますし、色使いに自信がなければ、カラリストの理論を勉強してみようと思うかもしれません。
私の場合も、旅先で出張サービスを行う中で「どうすれば短時間で特徴を捉えられるだろう?」という課題に直面し、それまであまり意識していなかった“クロッキー”の練習に力を入れ始めました。結果的に、ライブペインティングのスピードや正確性が飛躍的に向上し、活動の幅も広がったんです。下手だと感じるポイントが、新しい学びや技法を取り入れるきっかけになることは多いと思います。
6. 比較のしすぎは禁物、でも適度な刺激は大切
「周りと比較しないほうがいい」と言われても、SNSやネット上で素晴らしい作品を見れば、どうしても比較してしまうものです。ただ、比較をすべて否定するのではなく、上手い人の絵を見ることを“学び”や“刺激”に変えられれば、それは大きなプラスになるでしょう。たとえば、「この人の構図は参考になるな」「この色遣いは真似してみたい」と積極的に吸収するのです。
一方で、「あまりにも比較しすぎて落ち込むだけ」という状況に陥っているなら、一旦SNSから距離を置いたり、作品を見る頻度を下げたりするのも一つの手。自分のペースを大切にしながら、ほどほどに“いい刺激”をもらう程度が理想かもしれません。
7. 続けると“自分らしさ”が育ってくる
絵を描き続けると、技術面だけではなく、自分が本当に描きたいテーマやスタイルが少しずつ明確になってきます。はじめは「下手だから何も表現できない」と思っていたとしても、描き続けるうちに「自分はこういうモチーフを描くのが好きなんだ」「こういう色遣いやタッチが落ち着くんだ」という“自分らしさ”を発見できるはず。
私も、もともと静物画や人物画に挑戦することが多かったのですが、描くほどに「北海道の風景を描くときが一番ワクワクする」と気づき、そこから風景画をメインにするようになりました。下手かどうかより、自分がどこに魅力を感じるかが作品の方向性を決めると思います。続けることでしか、その“自分らしさ”は育ってこないのではないでしょうか。
8. “下手”な今だからこそ描けるものがある
最後にぜひお伝えしたいのは、“下手”と思っている今だからこそ描ける作品や表現があるということ。完璧を目指そうとしすぎると、逆に個性や勢いが削がれてしまうケースもあります。荒削りな線や拙い色塗りに、予想もしなかった魅力が隠れていることだってあるんですよね。
私自身、昔のスケッチや油絵を見返すと、「今よりデッサン力は明らかに低いけど、この勢いや大胆さは当時しか出せなかったな」と懐かしく感じます。成長すると同時に失われる“初々しさ”や“自由度”は、絵の大切な一面だと思います。もしあなたが今「下手だな…」と思っているなら、その“今しかない感性”をぜひ大切に描いてみてください。後から振り返ると、そこにしかない魅力があるはずです。
ここまで、“絵が下手でも大丈夫!続けることで見える景色がある”というテーマでお話ししてきました。改めてポイントを整理すると、
1. 「下手」と思うのは、なぜ?
2. “下手”な絵にだって魅力がある
3. 続けることで“好き”が深まる
4. “下手”から生まれる成長の実感
5. 新しい可能性に出会うための“きっかけ”にもなる
6. 比較のしすぎは禁物、でも適度な刺激は大切
7. 続けると“自分らしさ”が育ってくる
8. “下手”な今だからこそ描けるものがある
結局のところ、絵が下手だからといって、描く喜びや可能性が否定されるわけではありません。むしろ下手な状態からスタートすることこそが、成長や発見に満ちた旅路の始まりになるのです。続けていくうちに、いつの間にか技術が上がり、自分らしさが芽生え、周りからの評価が変わってくる――そんな変化は決して珍しいことではありません。
どうか「絵が下手だから」とあきらめず、“今”の自分にしかない表現や感性を大切にしながら、少しずつでも筆を動かしてみてください。そこには、下手だからこそ楽しめる瞬間や、続けていくからこそ見える景色が必ずあるはずです。あなたの絵が、あなた自身の心を豊かにし、いつか誰かにとっての大切な作品へと成長していくことを願っています。
執筆者:寺野彬秀