絵を描くのが辛くなったら…それでも続ける意味とは? | 寺野彬秀
- 寺野彬秀
- 2月6日
- 読了時間: 6分
更新日:2月18日
こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。出張サービスをはじめ、いろいろな場所で人と絵を通じて交流する中で、「最近、絵を描くのが辛くなってしまった…」「もう筆を握りたくない」という話をよく耳にします。実は私自身も、創作に疲れて気力をなくしかけたことが何度もありました。そんなとき、「なぜ自分はこんなにも苦しい思いをしてまで絵を描いているのだろう?」と自問自答した経験があります。では、絵を描くのが辛くなったとき、それでも続ける意味とは一体何なのでしょうか。今回は、そのヒントを8つの視点からお伝えしてみたいと思います。あなたがもし今、「もう描くのはやめたい」と感じているなら、少しでも心が軽くなるきっかけになれば嬉しいです。
1. 辛さの正体を見極める
まず、「絵を描くのが辛い」と感じたとき、その辛さの原因をはっきりさせることが大切です。具体的には「技術的な壁にぶつかっているのか」「評価されない孤独感に苛立っているのか」「仕事や締め切りのプレッシャーが大きいのか」など、辛さにはさまざまなパターンがあります。私の場合、技術的な限界を感じた時期と、収入や仕事の都合で追い詰められた時期とでは、辛さの内容も対処法もまるで違いました。何が原因なのかをはっきり言語化してみると、意外に「ただ休息が足りないだけだった」「締め切りを調整すれば余裕が持てそう」などの打開策が見えてくることもあるのです。
2. “そもそもなぜ絵を描いているのか”を思い出す
辛い気持ちでいっぱいのときこそ、原点に立ち返るのが有効です。「なぜ自分は絵を描こうと思ったのか」を思い出すことで、少しずつモチベーションの糸口をつかめるかもしれません。たとえば、「子どもの頃から絵を描くのが純粋に好きだった」「誰かを喜ばせたくて描き始めた」「景色の美しさを形に残したいと思った」など、人それぞれにストーリーがあるはずです。私も風景画を主に描くようになったきっかけは、北海道の大自然に心打たれ、“この感動をどうしても形にしたい”という思いがあったから。辛いときには、その“描き始めたころの想い”を思い出すと、もう一度筆を取りたくなることがあります。
3. 一度“描かない時間”を作ってみる
絵が辛いとき、無理に「描かなきゃ」と自分を追い込んでも逆効果の場合もあります。むしろ、一度意識的に“描かない時間”を作ってみると、心がリフレッシュして自然と描きたい気持ちが戻ってくることも少なくありません。私もスランプが続いたときには、あえて数日から1週間ほどまったく筆を握らず、美術とは関係ない映画や音楽、本を楽しんだり、自然の中を散策したりしました。そうすると、視野が広がり、思わぬところで新しいインスピレーションが得られることも。“描き続けること”が大事とはいえ、無理を続けて心身を壊してしまっては元も子もありません。休む勇気も時には必要です。
4. “同士”や“仲間”と悩みを共有する
絵を描くのが辛いとき、その気持ちを一人で抱えてしまうとより深刻化しやすいです。同じような立場の仲間や先輩アーティストと交流することで、「あ、自分だけじゃないんだ」と気がラクになる瞬間が結構あります。SNSのコミュニティや美術サークルなどを活用すれば、思いのほか気軽に同士が見つかることも。私もローカルのアートイベントに積極的に参加して、他のクリエイターと話すうちに「みんな苦労してるんだな」「その苦労を乗り越えたからこそ、あの作品が生まれたんだ」と勇気づけられました。辛さを共有できる相手がいると、一気に視界が開けるケースも多いです。
5. “完璧”よりも“成長”にフォーカスする
絵を描く人は、つい「完璧な作品」を求めがちですが、そのハードルの高さが辛さを生む原因になることがあります。完璧を目指すより、“昨日よりほんの少し上手くなったかもしれない”という成長にフォーカスすると、気持ちに余裕が生まれるかもしれません。私も、「今回の絵は完璧じゃないけど、影のつけ方は前より良くなったな」「色の重ね方に新しい発見があったな」という小さな達成感を積み重ねることで、辛さをバネに変えられた経験があります。全体を完璧に仕上げるというより、一箇所でも“前進”があれば上出来――そんな気楽な考え方で続けているうちに、気づけば大きく成長していることもあるものです。
6. 評価に振り回されない“描きたい気持ち”
SNSやコンテストなどで評価される機会が増えると、絵を描くモチベーションが“評価されるため”になってしまい、辛くなる場合があります。もちろん評価が欲しい気持ちは誰しもありますが、それだけが目的になると自分の中で“描きたい気持ち”が失われてしまうことがあるのも事実。私は一時期、SNSのリアクションを気にしすぎて描くのが嫌になった経験があります。そんなとき思い出したのが、「自分はなぜこの絵を描きたかったのか?」という原点。評価を得るためではなく、“描きたい”という内なる衝動が、結果的に本物の表現を生むのではないでしょうか。
7. 違う技法やテーマに“冒険”してみる
絵を描くのが辛いとき、多くの場合“マンネリ”や“行き詰まり”が背景にあるかもしれません。そこで一度、いつもとまったく違う技法やテーマに挑戦してみるのはいかがでしょう。たとえば、油絵ばかり描いていたなら水彩やデジタルを試すとか、人物ばかり描いていたなら風景画に手を出してみるなど。私もずっとアクリル画を主軸にしていましたが、ある時期に水彩を始めたところ、新鮮な発見がたくさんあってモチベーションが蘇りました。冒険することで、“まだ自分にはこんな描き方があったのか”と再認識でき、辛さから抜け出すきっかけになるかもしれません。
8. “描き続ける先”にある予想外の喜び
最後に強調したいのは、“描き続ける先”には予想外の喜びが必ず待っているということです。最初は苦しくて仕方ない作業でも、続けているうちに大きなブレイクスルーが訪れることがあります。私自身、まさに挫折寸前だった時期に、偶然出張サービスの依頼を受け、そこで描いた絵が思いのほか評判を呼び、「もっといろんな場所で描いてみたい」と思えるようになりました。辛かったからこそ、新しい出会いや学びが転がり込んできたのかもしれません。やめてしまうとそのチャンスも消えてしまう――だからこそ、もう少しだけ描き続けてみる価値があるのではないでしょうか。
以上、「絵を描くのが辛くなったら…それでも続ける意味とは?」というテーマで、8つの視点をお伝えしました。もう一度まとめてみると、
1. 辛さの正体を見極める
2. “そもそもなぜ絵を描いているのか”を思い出す
3. 一度“描かない時間”を作ってみる
4. “同士”や“仲間”と悩みを共有する
5. “完璧”よりも“成長”にフォーカスする
6. 評価に振り回されない“描きたい気持ち”
7. 違う技法やテーマに“冒険”してみる
8. “描き続ける先”にある予想外の喜び
絵を描くことは、時に苦しさや重圧を伴う作業ですが、その先にしか見えない光景や出会い、学びがたくさんあります。辛いからこそ生まれるアイデアや表現もあるし、やめようと思った瞬間に意外なチャンスが巡ってくることもあります。大切なのは、辛さを抱えたままでも「まだ描きたい気持ちがあるか」を自分に問い続けること。その気持ちが少しでも残っているなら、どうかもう少しだけ描き続けてみてください。
描き続けた先に、必ずと言っていいほど“ああ、あのときやめなくてよかった”と思える瞬間が訪れます。あなたの絵が、いつか誰かの心を動かし、あなた自身を救うかもしれない――その可能性を信じて、苦しいときも歩みを止めずにいてほしいと願っています。
執筆者:寺野彬秀