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好きな絵を描くだけでOK?それでも上達する理由 | 寺野彬秀

  • 執筆者の写真: 寺野彬秀
    寺野彬秀
  • 2024年12月25日
  • 読了時間: 7分

こんにちは。私は1980年生まれ、北海道在住の画家、寺野彬秀(てらの あきひで)と申します。私自身、もともとは「好きな絵をただ描いているだけ」からスタートし、そこから少しずつ技術を磨き、現在は出張サービスや展示会などを通じて作品を発表しています。活動を続ける中でよく耳にするのが、「ただ好きな絵を描いていても上達しないのでは?」という不安の声です。確かに、美術の専門教育やデッサンの基礎練習をしっかり積む方法が王道のように思われるかもしれません。


しかし、私の経験上、「好きな絵を描くだけ」であっても、ちゃんと上達につながるポイントがいくつもあると感じています。今回は、その理由をいくつかの視点からご紹介したいと思います。「基礎練習に飽きちゃう」「学ぶ時間があまり取れない」という方でも、自分の“好き”を活かしながら成長していけるヒントになれば嬉しいです。


1. 好きこそ“最大の原動力”になる


好きな絵を描いているとき、私たちは自然と集中力が高まり、時間を忘れて没頭することが多いものです。これは非常に大きなメリットです。苦手な練習を無理やり続けるよりも、“好き”の力でモチベーションを維持できるほうが、結果的に描く量も増えていくでしょう。


私自身も、風景画が大好きで、特に北海道の雄大な自然をキャンバスに閉じ込める瞬間が何より楽しいと感じています。その楽しさがあるからこそ、毎日欠かさず筆を握り、「もっとこの色彩を追求してみたい」「もう少し奥行きを出してみたい」といった欲求が自然に湧いてくるのです。好きなものを描くことで生まれる“描きたい欲”こそが、成長を支える最大のエンジンになると言えます。


2. “好き”を極めるうちに生まれる疑問と向上心


ただ好きなものを描き続けていると、ある時ふと「あれ? もっとこうしたほうがいいかも」「ここはどう描けばいいんだろう?」と疑問が湧いてくる瞬間があります。たとえば、キャラクターを描くのが好きな人なら「このポーズをもっと自然に見せたい」「表情をさらに豊かにしたい」という課題が出てくるでしょう。風景画が好きな人なら「空と雲の微妙な色の差をどう塗り分ければいいのか」といった具体的な疑問が浮かぶかもしれません。


実は、この疑問や課題こそが上達のきっかけになります。描き続けているからこそ、自然に“ここを改善したい”という向上心が芽生えるのです。そして、その向上心に従って情報を調べたり、他の作家の作品を研究したりするうちに、結果的に技術的な基礎や知識が身についていくわけです。“好きなだけでOK?”と思うかもしれませんが、その好きが深まるほど、次なるスキルを欲しがる自分に気づくのではないでしょうか。


3. インプットへの意識が自然と高まる


好きな絵を描いているうちに、「もっといろいろな作品を見てみたい」「自分の好きなジャンル以外でも、表現のヒントになるかも」といった形で、インプットへの意識が高まることはよくあります。好きだからこそ、“もっと知りたい”“もっと上手くなりたい”と、他のアーティストの作品や資料に目を向けるようになるわけです。


私も最初は「とにかく北海道の雪景色を描きたい」という思いだけでスタートしましたが、次第に「雪景色を描くうえでの光と影の使い方を学びたい」と思うようになり、街並みや人物など他のモチーフも観察するようになりました。その過程で、「こういう筆づかいって案外人物画にも応用できるんだな」と新しい発見をすることも少なくありません。好きなジャンルを極めるために、自然と広範囲のインプットを行うようになるのが、上達を加速させるポイントの一つです。


4. 試行錯誤の“回数”が増える


「好きな絵を描くだけ」だと、基礎練習のような体系的な学習は少ないかもしれません。ただ、その代わりに“描きたい絵”をより良くするために何度も描き直したり、色の塗り方や筆づかいを試行錯誤しやすいというメリットがあります。数をこなしていくうちに、失敗と成功の事例が蓄積されていき、自然と技術が底上げされるんです。


私も最初、雪景色を描くときにどうしても奥行きが足りないと感じ、ハイライトや陰影の入れ方を何十通りも試していました。何度も描き直すうちに「あ、このパターンはリアルに見える」「こっちはちょっと違和感がある」といった感覚が研ぎ澄まされていきます。こうした“量”をこなすアプローチは、体系立てて練習する方法とはまた違う形で効果を発揮するわけです。


5. “個性”が育ちやすい


体系的な美術教育を受けることは確かに大きなメリットがありますが、一方で“型”にはまりすぎるリスクもあります。好きなものを描き続ける独自のスタイルは、結果として“個性”や“オリジナリティ”を強く育むことにつながるかもしれません。


私が尊敬するアーティストの中にも、独学でひたすら自分の好きな世界観を描き込み、そのユニークさが評価されてプロになった方がたくさんいます。好きなテーマやモチーフに没頭することで培われる“こだわり”や“世界観”は、時に技術的な完成度以上に強い印象を与えることもあるのです。絵を描く上で大切なのは、技術力だけではなく、自分らしさをいかに表現できるかという部分でもあるでしょう。


6. “飽きない”から継続しやすい


絵の上達には“継続”が欠かせません。どんなに才能があっても、続けなければ技術は伸びないし、知識も身につきません。好きな絵を描いている人は、“好きだからこそ飽きにくい”という大きな利点があります。無理やりやらされる練習や興味のない課題は、モチベーションが続かずにやめてしまうこともあるでしょう。


私も一時期「もっと基礎力をつけなくては」と思い、ひたすら石膏デッサンなどのトレーニングをした時期があります。それはそれで有益でしたが、正直飽きてしまって続きませんでした。しかし、大好きな風景や動物をモチーフにしたデッサンであれば、毎日でもやりたくなる。結果的に「描く量」が増え、上達のスピードも上がったんです。好きな題材にこだわることは、継続における強力なエンジンになるわけです。


7. 自然と“基礎”にも目が向く


「好きな絵を描くだけでいいの?」と疑問を持つ人がいるのは当然です。確かに、ある段階まではそれで十分楽しいかもしれませんが、より表現の幅を広げたいときに基礎が必要になることは間違いありません。ただ、好きなものを描いていると、先述のとおり「もっとこうしたい」「さらにこう描きたい」という意欲が出てきます。そこから逆算的に「デッサン力が足りない」「パースがわからない」と基礎学習を自主的に始めるケースは多いんです。


私自身も、「雪景色を本当にリアルに描きたい」という思いが高まるにつれ、「雪が反射する光の理屈」を知るために物理学の本を読んだり、デッサンの参考書で光の当たり方を復習したりするようになりました。好きなことを突き詰めるほど、“基礎の必要性”に気づく瞬間が必ずやってくるのです。ここでも大事なのは、“好き”が原動力になるという点でしょう。


8. 結局は“楽しく”描き続けることが最強


最後に、私が強調したいのは「結局は楽しんで描き続ける人が一番強い」ということです。上達するための正攻法は確かに存在しますが、“好き”という気持ちが弱まってしまうと、どんな優れたメソッドを使っても長続きしません。逆に、好きで好きで仕方がないという情熱があれば、多少遠回りに見える方法でも最終的には驚くほど成長できるケースが多いです。


無理なく楽しく、自然と手を動かし続けられるのが“好きな絵を描く”最大のメリットだと思います。私もこれまで何度かスランプに陥ったり、画家を続ける道に迷いを感じたりしたことがありましたが、最終的には「やっぱり描くことが楽しい」と思えるかどうかが原動力になってきました。楽しさがあるからこそ、どれだけ失敗しても筆を置かずに済んだのです。


以上、“好きな絵を描くだけでOK?それでも上達する理由”を8つの視点からお話ししました。改めて整理すると、


1. 好きこそ最大の原動力になる

2. 好きだからこそ生まれる疑問と向上心

3. インプットへの意識が自然と高まる

4. 試行錯誤の回数が増える

5. 個性が育ちやすい

6. 飽きないから継続しやすい

7. 自然と基礎にも目が向く

8. 結局は楽しく描き続けることが最強


もちろん、基礎練習や技術的な学習も大切な要素です。しかし、最初からその“義務感”ばかりを優先してしまうと、「絵を描く楽しさ」自体が薄れてしまう恐れもあります。自分が本当に描きたいものを描くというのは、一見遠回りに見えるようで、実は大きな成長へとつながる近道でもあるのではないでしょうか。


これを読んで、「ああ、自分は好きな絵を描いていても大丈夫なんだ」と思っていただけたら嬉しいです。もっとも大切なのは、“楽しさ”を忘れずに描き続けること。そこから自然と上達への道が開ける――それが私が実感している事実です。あなたもぜひ、好きな絵を思い切り描いてみてください。その先に思わぬ発見やスキルアップのチャンスが待っているはずです。


執筆者:寺野彬秀

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